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第14話 トルコで覚えた、境界が溶ける瞬間
トルコ
イスタンブールのカドゥキョイで、夜に迷ったことがある。
海沿いから少し入った路地で、
思ったより人通りが少なくて、
店の明かりもまばらだった。
スマホの電波が不安定で、
地図が固まったまま動かない。
立ち止まっていると、
向かいのタバコ屋のおじさんが
じっとこちらを見ていた。
声をかけられるのかと思ったら、
何も言わず、
店の奥から小さなグラスを持ってきた。
チャイだった。
甘い。
驚くほど甘い。
行き先を伝えると、
おじさんは店を閉める準備を始めた。
閉店時間なのに、
シャッターを半分下ろして、
一緒に歩き出した。
この道は暗いから、と言って
少し遠回りをする。
宗教も、言語も、文化も違うはずなのに、
その時間に境界はなかった。
別れ際、
お金はいらない、とだけ言われた。
トルコでは、
線が曖昧だ。
モスクの隣にバーがあり、
スカーフの女性が
赤ワインを飲んでいる。
決めきらない。
分けきらない。
女風の現場でも、
近づいていいのか、
甘えていいのか、
線を引きすぎてしまう人がいる。
でも本当は、
境界は溶けるときもある。
施術では、
はっきりさせすぎない。
でも、壊さない。
その間にいる時間を、
一緒に持つようにしている。
たけと
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